第1章 遭遇

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クメルの手綱(たづな)を持つ手は震えていた。 「だから私は言われた通りにスザールでオイルを撒いたのです。 でも…スザールの大切なお茶の木は…枯れてしまいました! アーリン様は嘘をついたのですか?!」 「お前はどう思う?」 アーリンは質問を返した。 「どう…?」 「お前が嘘だと思えば嘘だし、嘘ではないと思えば嘘ではないのだ。事実と言われるものの大半はそんなものだ。…どう思う?」 意味深な眼差しでクメルに問いかけた。 「私は…」 クメルは一度は言葉に詰まったが 「嘘だと思います。」 キッパリと言った。 「ふむ。そうか。ならば…」 アーリンは冷ややかな笑みを浮かべて、覗くようにクメルの瞳を見つめた。 「クメル!奴の目を見るな!」 オーリが右手でクメルの目を覆った。 「口止めの魔法をかけるつもりだろう。子供の脳には危険だ。やめておけ。」 「余計なことを。口止めできぬのなら殺す事になるぞ。」 アーリンから笑みが消えた。 「今の『嘘』はそこまでしても他に知られたくないのかな?」 オーリもやや挑発的だ。 「………」 …相変わらず気に食わぬ… 今度は憎々しげな表情だ。 「…まあいい。今は、そんな事にかまけている時間は無い。私は大切な人物に会いに来たのだ。邪魔をしないでもらおう。」
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