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クメルの手綱を持つ手は震えていた。
「だから私は言われた通りにスザールでオイルを撒いたのです。
でも…スザールの大切なお茶の木は…枯れてしまいました!
アーリン様は嘘をついたのですか?!」
「お前はどう思う?」
アーリンは質問を返した。
「どう…?」
「お前が嘘だと思えば嘘だし、嘘ではないと思えば嘘ではないのだ。事実と言われるものの大半はそんなものだ。…どう思う?」
意味深な眼差しでクメルに問いかけた。
「私は…」
クメルは一度は言葉に詰まったが
「嘘だと思います。」
キッパリと言った。
「ふむ。そうか。ならば…」
アーリンは冷ややかな笑みを浮かべて、覗くようにクメルの瞳を見つめた。
「クメル!奴の目を見るな!」
オーリが右手でクメルの目を覆った。
「口止めの魔法をかけるつもりだろう。子供の脳には危険だ。やめておけ。」
「余計なことを。口止めできぬのなら殺す事になるぞ。」
アーリンから笑みが消えた。
「今の『嘘』はそこまでしても他に知られたくないのかな?」
オーリもやや挑発的だ。
「………」
…相変わらず気に食わぬ…
今度は憎々しげな表情だ。
「…まあいい。今は、そんな事にかまけている時間は無い。私は大切な人物に会いに来たのだ。邪魔をしないでもらおう。」
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