16人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「大切な人物に会うだと?」
オーリの目も鋭くなる。
「奇遇だな。私もだよ。ある若者に会いに来た。彼に急ぎで伝えたい事があるので行かせてもらう。」
セレのいる巌窟は目と鼻の先だ。感知タイプではないオーリでもセレの存在を微かに感じる。
セレの方もきっとこちらの存在に感づいているだろう。
…セレ、出て来るな…
そう念じながら、セレがいるであろう方向に馬を向け、一歩を踏み出した。
「そうはさせない。彼に先に会うのは私だ。」
アーリンは大地の魔法を発動した。大地の魔法とは重力を操る魔法だ。オーリに掛かる重力を強め、動きを止めようとする。
「あっ?!」
オーリと一緒にいたクメルは、強い重力による圧を初めて体感し驚愕した。が、それはほんの一瞬で消えた。
オーリも大地の魔法を使える。反対の作用の魔法で打ち消したのだ。
「悪いが先に会うのは私の方だ。何を隠そう身内なのだよ。クメル、君はここで待っていなさい。」
クメルを馬から降ろし、彼に向かって短い呪文を唱えた。アーリンの魔法から守る為の防御だ。
「ハッ!」
馬の腹を蹴り、山の斜面をアリスドリナに向かって駆け降りる。
アーリンは次の魔法を発動させた。
オーリと馬が炎に包まれた。火の魔法だ。
最初のコメントを投稿しよう!