第1章 遭遇

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「大切な人物に会うだと?」 オーリの目も鋭くなる。 「奇遇だな。私もだよ。ある若者に会いに来た。彼に急ぎで伝えたい事があるので行かせてもらう。」 セレのいる巌窟(がんくつ)は目と鼻の先だ。感知タイプではないオーリでもセレの存在を微かに感じる。 セレの方もきっとこちらの存在に感づいているだろう。 …セレ、出て来るな… そう念じながら、セレがいるであろう方向に馬を向け、一歩を踏み出した。 「そうはさせない。彼に先に会うのは私だ。」 アーリンは大地の魔法を発動した。大地の魔法とは重力を操る魔法だ。オーリに掛かる重力を強め、動きを止めようとする。 「あっ?!」 オーリと一緒にいたクメルは、強い重力による圧を初めて体感し驚愕(きょうがく)した。が、それはほんの一瞬で消えた。 オーリも大地の魔法を使える。反対の作用の魔法で打ち消したのだ。 「悪いが先に会うのは私の方だ。何を隠そう身内なのだよ。クメル、君はここで待っていなさい。」 クメルを馬から降ろし、彼に向かって短い呪文を唱えた。アーリンの魔法から守る為の防御だ。 「ハッ!」 馬の腹を蹴り、山の斜面をアリスドリナに向かって駆け降りる。 アーリンは次の魔法を発動させた。 オーリと馬が炎に包まれた。火の魔法だ。
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