第3章 父と息子

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「ハサフ・サヴォイア・ランディールと言う名を知っているかね?」 「いいえ。」 「そうであろうな。キミに彼の事を教える者はいるまい。ハサフとは…」 ハサフとは、およそ60年前の国王の従兄弟(いとこ)の名前だ。 時の国王の息子は既に成人していたが、病弱で性格もおとなしかった。 その頃、ロストークの隣国ノルンに動きがあり国境付近で抗争が続いていた。弱々しい王太子が後継者ではロストークを守り切れないのではないかと国内には不安の声が上がっていた。 そこで国王の従兄弟であるハサフを次の王に望む者達が現れ、ハサフ自身も『心身共に強健な自分こそがロストークを率いるべきだ。』と蜂起した。 ハサフは既に軍人として幾つかの武勲があり、支持者も増えていた。 しかし、王太子は病弱とは言え、執政ができないほどではなかった。そして、おとなしくとも思慮深く、人望は厚かった。 ハサフ派と王太子派。ロストークの上層部は真っ二つに分かれて争った。どちらも魔法使いの血筋であり、時には熾烈(しれつ)な魔法戦となった。 なかなか決着はつかなかったが、ある時、ハサフとその取巻き数人が王宮を奇襲した。いずれも強力な魔法使いである。 ハサフは王宮内で禁断の魔法『殲滅(ミレニエ)光球(アーリ)』を発動した。
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