第3章 父と息子

15/28
前へ
/124ページ
次へ
含みのある言い方だった。 「ハサフの無念は我が父の無念、そして私の無念なのだ。 あの時ハサフが王位に着きロストークを率いていたなら、今頃は世界を圧倒する国力を誇っていただろうに。 見ろ、今のロストークを。当時から何も変わっていないではないか。 あれだけ高い文化と経済力を持ち、しかも強い魔法使いが揃っているというのに。」 アーリンの嫌味な言葉の端々に滲み出る、怒りとは違う暗い炎。 …これが『怨念』というものか… セレはこんなに暗澹(あんたん)とした心を感じ取ったのは初めてだった。 「ヴァシュロークやオーリは一体何をやって来たのだ。キミやフィズの事も含めて、宝の持ち腐れもいいところだ。価値観がおかしい。」 最も尊敬する二人のことをそんな風に言われたらセレは黙っていられない。 「ヴァッシュ様や父上は深い見識をお持ちだ。 それに国を率いるのに相応(ふさわ)しい人格の持ち主だ。 諸国との関わり合いを上手くやっているからこそ戦争が起こらないのだ。国内にも大きな紛争は無い。理想的な施政だ。」 「何も起こらなければ良い?セレ、キミは国を守るという事が分かっていない。現状を維持するだけでは他国に遅れを取るだけだ。国が無くなってしまうぞ。」 「ただ現状維持している訳では…」
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加