第3章 父と息子

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(らち)の明かない会話を上手く遮るように 「セレ様、オーリ様がお目覚めになりました。」 ソノがオーリの意識の回復を知らせに来た。 「父上が!」 セレはアーリンの事などそっちのけで診療所に戻った。 …チッ! アーリンは舌打ちした。 …私を正当だとセレに納得させる良い機会だったのに。オーリめ、どこまでも邪魔をする… そう。セレはアーリンの話術に(はま)りかかっていた。 相手の言う事を九割は否定する。残りの一割に逃げ道を作り、相手が気づかぬようにそこに追い込むのだ。その一割の中に『アーリンの言う事が正しいかもしれない』と思わせる言葉の罠を仕掛ける。 セレは自分の考え方を否定されて、反論し始めていた。その反論を受け入れる事こそ『逃げ道』だ。そこを糸口として懐柔(かいじゅう)するのだ。 …良し、乗って来た。やはりまだ若い… そう思った矢先のオーリの目覚めだった。 「まあいい。セレを絡め取る網はいくつも用意してある。」 アーリンもオーリの様子を見に行くことにした。
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