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「父上!」
「ああ、セレ。」
声が少し弱いものの、オーリはしっかりしていた。
「父上、御気分はいかがですか?」
セレはベッドの脇にしゃがみ、オーリの手を握った。
「うん、いつも通りとはいかないが特に悪くはない。大丈夫だ。」
オーリは笑みを浮かべた。
「セレとまた話ができる。夢のようだ。」
「私もです。どれだけこの日を思い描いたか…」
セレも微笑んでオーリを見つめ返す。
二人とも話したくてたまらない。しかし、まだオーリには長話をするほどの体力が無い。
「父上、話したい事は沢山ありますが体力の回復が先です。回復したらじっくりと語り合って…ロストークに帰りましょう。」
「セレ?」
…セレは旅を続けるものと思っていたが…
オーリは驚いた。
「父上にこれ以上御心配をおかけする訳にはまいりません。いったん故国に帰ります。」
「いいのか?お前はもともと好奇心に満ち溢れている。旅は楽しいだろう?」
やはり父親だ。息子の本質を分かっている。
「もちろんです。しかし、それは家族の安泰があってこそです。家族を危険に晒して旅を続けても、何も面白くありません。」
「そうか…。セレは昔からそういう子だったな。」
「父上…」
今度はセレが驚いた表情になった。
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