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「お前はいつも私達に気を使ってくれていた。分かっていたよ。…いや、いつも後から分かったんだ。」
「……」
「気づくのが遅すぎて、私はセレに感謝を伝えるタイミングを逃してばかりだった…。」
「…父上…。私も、いつも後から『言っておけば良かった』と思う事ばかりでした。できるなら、今、全部言いたい。でも、もう少しだけ待ちます。父上もどうかお待ちください。」
セレの瞳が潤んで来た。
「ああ。セレ。私にたっぷりと言い訳と謝罪をさせてくれ。」
「はい。私の方が言い訳も謝罪も多いと思います。きっと1日では終わりませんよ。耐久戦です。お覚悟を。」
「ハハ、分かった。しっかりと体力を蓄えるとしよう。」
システィンがセレの肩に手を置いた。
…そろそろです…
セレはうなずいて立ち上がった。
「イデア、キミに頼みたい事がある。」
静かにみんなの影に隠れるようについて来たイデアに声をかけた。
「はっ、はい。」
イデアはおどおどと返事をした。
「アリスドリナに行ってピアリ達の様子を見て来て欲しい。食糧や衣料もできるだけ届けてやってくれ。それと…」
セレは紙とペンを取り出してサラサラと要件を書いた。
「頼む。」
「はい。」
恭しく手紙と貨幣を受け取りイデアは出発した。
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