第3章 父と息子

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イデアを見送ると、セレはアーリンを振り返った。アーリンは部屋の隅に腕組みをして立っていた。 この部屋にはセレと一緒に来た両生類人達もいたが、アーリンは彼等の(そば)には決して近寄らなかった。 セレは睨むようにアーリンを見て言った。 「父上が回復するまでは何もしないで頂きたい。もし父上に何かあったら2度とあなたと話すことはない。」 「キミがそう言うのなら、ここでは大人しくするとしよう。」 …『ここでは』… またもや含みのある言い方だ。 オーリもベッドの上で2人を見ていたが、ふいに言った。 「ソノ、タリヤからの連絡は無いか?」 「はい。まだです。そろそろと思いますが。」 「そうか。ならば良い。休むとしよう。」 オーリは目を閉じた。 その会話を聞いたアーリンの目が鋭くなった。 …ロストーク本国と連絡を取り合っているのだな。本国にまだ動きは無いようだ。いや、あったとしてもすぐには分かるまい… 何を企んでいるのか…あくまでも何も知らぬ風を装った。 「私がここにいたのではオーリも休めまい。別の部屋を貸してもらおう。」 退出を申し出た。 システィンが立ち上がった。 「予備の処置室が空いています。粗末な椅子とベッドしかありませんが、ご勘弁ください。」
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