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「仕方あるまい。」
アーリンは無表情のまま部屋を移った。
アーリンが居なくなると、それまで静かだった両生類人達が話し出した。
「もう奴はアリスドリナには行かないのか?今度こそ息の音を止めてくれる。」
「ああ、あの毒トカゲ野郎も倒したし、今度は確実に仕留められる。」
「やめておけ。奴は風の魔法も使えるんだ。風の魔法使いは耳がいい。部屋の一つぐらい隔てたって丸聞こえだぞ。」
制したのはテムだ。
「確かにそうだけど、ここは魔法医の診療所だよ。医者には守秘義務があるんだ。防音は完璧だよ。」
システィンが言った。
「何だって!」
セレが顔色を変えた。
…完全防音!向こうの音もこちらに聞こえないって事だ!…
セレはアーリンがいる筈の部屋のドアを開けた。
「しまった!」
アーリンの姿は無かった。
「窓から出たな。」
セレも風の魔法使いだ。普通ならほんの僅かな音でも聞き逃す事は無い。人間どころかネコの忍び足だって聞き取れる。
この建物内ぐらいならアーリンの動きは直接見なくても音で分かる。だからこそ単独で別の部屋へ移動するのを止めなかったのだ。
…行き先はアリスドリナだ!…
セレも窓から飛び出した。
「奴が居ないって?!」
「追いかけよう!」
両生類人達も行こうとした。
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