第3章 父と息子

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「無駄です。」 ソノだ。 「風の魔法使いは速い。飛ぶ事もできます。私達では到底追いつけません。」 アーリンに追いつけるのはセレだけだ。 セレは風の魔法と大地の魔法を駆使して全速力で飛んだ。 …奴の狙いはピアリ達だ。手は出させん!… アリスドリナ内では魔法は使えないが、アーリンの方が先に到着したら… あそこに残っているメンバーは ピアリ、ナーガ、ディルザ、リーニエ、そしてクメルも合流しているかもしれない。 ピアリとナーガは人質にされるだろうが、あとは…きっと殺される… ディルザとリーニエは戦士だが、ディルザは深傷(ふかで)を負っている。まともに戦えるのはリーニエぐらいだ。 …アーリンは瞬時に目的を達成してアリスドリナを出るだろう… 人質を盾に取られたらセレは手を出せない。アーリンの思う壺だ。 …速く!… だがアーリンには地の利があった。 岩や樹木など障害物の配置。風の流れ。土地の勾配や高低差。全てを知っている。微塵(みじん)の迷いもなく最適で最短な『道無き道』を抜けて行く。 ほんの数秒差だが、セレとアーリンの差は縮まらなかった。 そして、その『数秒差』は決定的だった。 アリスドリナの洞窟で、最初にアーリンに気付いたのはナーガだった。 「アーリンが来た!」
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