第3章 父と息子

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その声にピアリとリーニエが洞窟の外に目をやった瞬間… 勝負はついていた。 リーニエは肩口から血を吹き出して倒れ、ナーガとピアリは当て身を食らって意識を失った。 アーリンはピアリを抱えてアリスドリナの魔法無効の範囲から離れ、最初にオーリと対峙したのと同じ崖、同じ中腹に立った。 セレが到着したのはその時だ。アーリンと渓流を挟んで対岸の崖に同じように立った。 「ピアリを返せ!」 「キミが私の話に応じてくれないのがいけないのだ。こうなったのはキミのせいだよ、セレ。」 「…どうしろと言うんだ?」 「何度も言っているだろう。私はキミと話がしたいのだよ。本音で話し合いたい。そこでだ。」 アーリンは古い短剣を取り出した。 「まずはこの剣でほんの少し、身体のどこかを傷つけて欲しい。話はそれからだ。」 短剣をセレに投げてよこした。 「これは…」 見覚えがあった。 「おや、それを知っているのかな?」 ほくそ笑んでアーリンが言った。 「記憶封じの剣…」 「その通り。つまらない記憶や理性でがんじがらめになったキミではなく、本当のキミと話がしたいのだよ。」 「……」 「これはリーニエの仕事だったのだが、キミが彼の金の雫玉を外してしまったからね。」
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