第3章 父と息子

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「…セレ様!」 リーニエは死んではいなかった。アーリンは心臓を貫こうとしたがリーニエの反応速度も速かった。僅かに身を(かが)め急所を避けた。 意識も失ってはいなかった。ただ、動けなかった。 セレが『記憶封じの剣』で自らを傷つけ、くず折れる様子を見ていることしかできなかった… リーニエの口の端から血が流れていたが、それは剣の傷のせいではない。怒りと悔しさで唇を噛み締めたからだ。 「ナーガ!おい!起きろ!」 側にたおれているナーガに呼びかけたが、反応が無かった。 リーニエは小石を投げつけた。 頭に当たった。 ピクリと手が動き、ナーガは目を開けた。 「ナーガ!さっさと起きろ!」 「ん?…あっ!」 ナーガは頭をさすりながらモゾモゾと起き上がった。 「おい!セレ様とピアリが連れ去られたぞ!」 「!」 ナーガは辺りを見回したがアーリンも誰も見えず気配すら感じ取れなかった。 「セレ様は記憶を封じられた。きっとアーリンは奴の都合の良い記憶をセレ様に刷り込む。昔、ロダ様にも同じ事をしていた。」 リーニエは『記憶封じの剣』の事を話した。 「記憶封じの剣か。なるほど。だからロダの記憶がおかしかったのか。でも、それなら何とかできるかもしれない。」
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