第3章 父と息子

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「欺く?お前が?…アーリンの言いなりになってあの広場で仲間を焼き殺したのはお前じゃないか!」 リーニエの声が荒くなった。 「…確かにそうだ。だが…あれは最後の仲間を助ける為だ。」 「何?」 「わずかに残ったカザルの人達を助けようと思ったからだ。」 「カザルの民はあの火炎放射で全滅したのではなかったのか?」 カザルの最後…。アーリンは町の外側から囲むように攻撃を重ね、人々は町の中央の広場に追い込まれ…焼き殺された。 「そうだ。最後のあの広場を任されたのは俺だ。アーリンへの服従を示す為に『お前の手で奴等を殺せ』と言われた。」 その時、地中に潜って殼や甲羅で炎から身を守っていた者達がいる事をディルザは知っていた。 「彼らだけでも助けたかったんだ。俺がやらなければアーリンがやっていただろう。アーリンの炎は俺のよりもずっと温度が高い。そうしたらきっと全滅だった…」 ディルザの脳裏にはその時の惨状…仲間が苦しむ姿や叫び声…がハッキリと残っている。 「火の魔法はそれ以来、発動できなくなった…」 「…そうだったか…」 思い返せば、その日以来リーニエとディルザは二人きりで話すことなど無かった。 「話せなかったよ。どこでアーリンに聞かれているか分からんからな。」
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