第3章 父と息子

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「………」 リーニエは複雑な心境を表す言葉が見つからず黙っていた。 「で?」 ナーガだ。 今、2人の凄絶な昔話を聞いても、情を挟まず主人(セレ)を救う最善策を探る。 「ディルザはアーリンを倒したいと思っているのか?」 「そうだ。カザルの恨みだけではない。今でもカザルと同じ惨劇が奴によって繰り返されている。奴に従う気など最初から無いさ。奴を止めなければならない。金の雫玉が無い今ならやれる。」 ディルザは闘う意志を示した。 ナーガはうなずいた。 「地下水脈がどうとかさっき言っていたな?」 「ああ。」 この辺りは昔は海だった。炭酸カルシウムの地層が多い。つまり小規模の鍾乳洞が幾つもある。断層沿いの水脈もある。 「あの城は地下にも貯蔵庫やら牢獄やら色々あるんだ。その数メートル下のところにも人が通れるぐらいの水脈がある。」 ディルザは水の魔法を使えるので水脈を感じ取る事ができる。 それに水の中なら気配も薄まる。元々ディルザも気配を消すのは得意だが… 「相手はアーリンだ。完全に気付かれないのは無理だ。誰か水の魔法を使える者が協力してくれれば…」 「ピアリだ!やっぱりピアリに連絡を取るしかない!」 ナーガとリーニエの声が重なった。
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