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「キミは私に仕えてくれているのか?私はどういう立場の人間なんだ?」
「フリート様?」
「フリートと言うのが私の名前なのか?」
ランスは驚きの表情を浮かべた。
「フリート様がどうかしてしまった!アーリン様にお知らせしなくては!」
ランスは小走りに去ってしまった。
何も分からぬまま、セレは部屋を出た。
…自分の事を思い出せる何かがあれば…
廊下に飾られた陶芸品や、銀の燭台、天井画などを見て歩いたが、特に引っかかる物は無かった。
背後にまた人の気配を感じて振り返ると
「フリート、どうした?」
アーリンだった。もちろんセレには誰だか分からない。
「あなたは?」
「私が分からないのか?!」
アーリンは大袈裟に驚いて見せた。
「ランス、キミの言う通りだ。フリートの様子がおかしい。医者を呼んでくれ。」
先程のランスが傍にいた。
「はい、すぐに。」
ランスはまたもや小走りに去っていった。
「本当に私が分からないのか?フリート。」
アーリンはセレの肩に手を掛けた。
「はい。分かりません。」
「何と言う事だ! 昨日、頭を打ったから心配はしていたんだが…」
「頭を?」
「昨日の事も忘れたのか? 昨日、お前は階段から落ちたんだ。ああ、私が祝いの酒を飲ませすぎたせいだ。」
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