第4章 セレ

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…前にもこんな事があったような気がする… 1年近く前、セレはロストークの王宮で弟に会う為にやはり高い塔の壁を登った。記憶は封じられている筈だが、身体のどこかが覚えているのだろうか? アーリンの部屋の近くを避け、壁伝いに平行に移動して行く。 いつものセレだったら魔法の波動でアーリンに気付かれただろう。今は記憶を失った事で波動が弱くなっているのだ。 それは好都合だが、つまり魔法が使えなくなっているのだから足を滑らせたら本当に死んでしまう。 本館を横切り通路の部分に手が届くと、セレはその上に飛び乗った。 「ここは楽だ。」 通路の屋根の上を走った。そして東の塔の壁にまた張り付く。 「結構な高さだな。20mってところか。」 セレは上を見上げて呟いたが、ためらう事なく登り始めた。 何分、経っただろう。冷たい風の中だと言うのに汗ばんで来た。でも休む事は無かった。 そして…ついにピアリの部屋の窓に手が届いた。 セレの部屋とは違い、窓の外には鉄格子が付いていた。セレは鉄格子をつかみ身体を引き上げた。僅かに出っ張った窓枠に足をかけ コン、コン、コン。 窓を3回、叩いた。 …鳥?… ピアリはそう思った。 鉄格子の隙間から外をのぞいて見た。 「えっ…!」
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