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ピアリは窓に張り付いた。
「セレ!」
セレの名を呼んだが、窓は閉まっていたし外は風がうなっている。それに魔法の力が弱くなっているせいもあり、セレには聞き取れなかった。
セレは鉄格子に顔を近づけた。ピアリと目が合った。その瞬間
…胸が?…
何故かキュンと心臓が苦しくなった。だが、それがどういう感情なのかは分からなかった。
「さっきの歌声はキミだろう?」
声をかけずにはいられなかった。
ピアリは窓を押し開けたが、鉄格子が邪魔をしてほんの少しの隙間しかできなかった。それでも
「セレ!無事なのね!」
今度はセレに声が届いた。
「セレ?私の事か?」
「えっ?」
ピアリは驚いて瞬きした。
「セレ、自分の名前を忘れちゃったの…?」
「私はフリートと呼ばれているが?」
「アーリンに何かされたの?」
「アーリン?父上が何を?」
「父上?!」
ピアリは言葉を失った。
「セレ…私が誰か分かる?」
恐る恐る、聞いてみた。
「………」
セレは戸惑った。目の前の少女が誰だか全く分からない。でも、分からないと答えてはいけない気がした。
黙っているセレを見てピアリは悟った。
…セレの記憶が変えられている…
「アーリンはあなたのお父さんじゃ…」
そこまで言った時
「お嬢さん、」
ランスだ。
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