第4章 セレ

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ピアリは窓に張り付いた。 「セレ!」 セレの名を呼んだが、窓は閉まっていたし外は風がうなっている。それに魔法の力が弱くなっているせいもあり、セレには聞き取れなかった。 セレは鉄格子に顔を近づけた。ピアリと目が合った。その瞬間 …胸が?… 何故かキュンと心臓が苦しくなった。だが、それがどういう感情なのかは分からなかった。 「さっきの歌声はキミだろう?」 声をかけずにはいられなかった。 ピアリは窓を押し開けたが、鉄格子が邪魔をしてほんの少しの隙間しかできなかった。それでも 「セレ!無事なのね!」 今度はセレに声が届いた。 「セレ?私の事か?」 「えっ?」 ピアリは驚いて瞬きした。 「セレ、自分の名前を忘れちゃったの…?」 「私はフリートと呼ばれているが?」 「アーリンに何かされたの?」 「アーリン?父上が何を?」 「父上?!」 ピアリは言葉を失った。 「セレ…私が誰か分かる?」 恐る恐る、聞いてみた。 「………」 セレは戸惑った。目の前の少女が誰だか全く分からない。でも、分からないと答えてはいけない気がした。 黙っているセレを見てピアリは悟った。 …セレの記憶が変えられている… 「アーリンはあなたのお父さんじゃ…」 そこまで言った時 「お嬢さん、」 ランスだ。
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