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一方でセレはアーリンに叱られていた。
「フリート!部屋で安静にしていろと言っただろう!何故言った通りにしない?!」
「どうしてもあの歌声が気になって…どんな女性なのか見たくなったのです。」
「お前は具合が悪いのだ。治ってからにしろと言ったはずだ。大体、私が気がつかなかったらお前は今頃死んでいるのだぞ!」
アーリンは本当に怒っていた。
ここまで心配してくれているとは、…やはり本当に父親なのかもしれない…とセレは思い始めていた。
アーリンは確かにセレを心配していたが、心配の出どころは『野望達成の大事な駒を失ったら困る』ところだ。
今のセレにはそこまで分からなかった。
アーリンはセレの魔法の力が戻る前に、完全に自分に敬服させ忠誠心を植え付けたかった。
そして丹念に嘘を擦り込み、ロストーク王家に深い憎悪を抱かせる。最終的にはセレをロストーク王の座に着かせ、完全にロストークを乗っ取る。
それまでの具体的な段取り、ロードマップを思い描くと胸が高鳴るのだった。
だから
「フリート、本当にお前に何かあったら私が悲しいのだ。もう2度と無茶をするんじゃない。いいな。」
念を押した。
「はい、すみませんでした。」
セレはしおらしく謝った。
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