第4章 セレ

8/35
前へ
/124ページ
次へ
一方でセレはアーリンに叱られていた。 「フリート!部屋で安静にしていろと言っただろう!何故言った通りにしない?!」 「どうしてもあの歌声が気になって…どんな女性なのか見たくなったのです。」 「お前は具合が悪いのだ。治ってからにしろと言ったはずだ。大体、私が気がつかなかったらお前は今頃死んでいるのだぞ!」 アーリンは本当に怒っていた。 ここまで心配してくれているとは、…やはり本当に父親なのかもしれない…とセレは思い始めていた。 アーリンは確かにセレを心配していたが、心配の出どころは『野望達成の大事な駒を失ったら困る』ところだ。 今のセレにはそこまで分からなかった。 アーリンはセレの魔法の力が戻る前に、完全に自分に敬服させ忠誠心を植え付けたかった。 そして丹念に嘘を擦り込み、ロストーク王家に深い憎悪を抱かせる。最終的にはセレをロストーク王の座に着かせ、完全にロストークを乗っ取る。 それまでの具体的な段取り、ロードマップを思い描くと胸が高鳴るのだった。 だから 「フリート、本当にお前に何かあったら私が悲しいのだ。もう2度と無茶をするんじゃない。いいな。」 念を押した。 「はい、すみませんでした。」 セレはしおらしく謝った。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加