第4章 セレ

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「……」 姉達は絶句した。 「僕達は騙されていたんだ! 考えてみれば、この農園に出入りするのにどうして一部の人間しか入れないんだ?厳重なチェックが必要なんだ? みんなの為になる作物だったら、みんなでたくさん栽培すればいいじゃないか!」 エメルとネフルは困惑した。 「…クメル、あなたが嘘をついているとは思わない。でもアーリン様がみんなの為にならない事をするなんて…」 「そうね。お茶の木が枯れたのも何か他の原因かもよ。」 エメル、ネフル、クメル。この三姉弟は不毛の地で生まれた。 冷たく乾いた風しか吹かないそこでは、わずかなライ麦と芋しか育たなかった。毎年飢餓で死ぬ者が出た。 そこにアーリンが来て、風の魔法や大地の魔法で気候や土を変えた。小麦やとうもろこしが育つようになり餓死者はいなくなった。 「アーリン様のおかげで、村では誰も飢え死にしなくなったんだよ。」 「私達の能力を認めてくれたのもアーリン様だよ。おかげで毎日こんなに良い生活ができるんだ。」 「だから騙されるんだ!」 握った手を震わせてクメルが言った。 「アーリン様は人を差別するんだ。利用できる人間には優しくするけど、利用できないと思えばひどい扱いをする。僕は見たんだ。」
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