第4章 セレ

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ネフルが呪文を唱えた。 湿っぽく(かすみ)がかっていた空気がサラサラした感じに変わっていった。 シダの一種であるソグ…正しくはモルス…は湿地を好むので、今まではネフルの水の魔法でしっとりした空気感を保っていた。しかし魔法が解除され、湿度が下がったのだ。 エメルは 「みんな!作業をやめて!外に出てちょうだい!」 大きな声で農園で働いている人々に指示を出した。 みんな「何事?」という表情になったが、ここの作業員のリーダーであるエメルの指示には黙って従った。 そして、誰も農園内に居なくなった事を確かめてからエメルは火の魔法を発動させた。 「燃焼(フレミア)!」 モルス畑のあちこちから火の手が上がった。 あっという間に農園は炎と煙に包まれた。 外に出ていた人々もさすがに騒ぎ出した。 「農園が燃えてる?!」 「どうして?!」 「エメルとネフルはどこだ?」 慌てた人々は2人を探し始めた。 しかし、その頃、エメル、ネフル、クメル、の姿はそこには無かった。すでに『次に行くべき場所』を目指して走っていた。 それはクメルが働いていた蒸留所だった。 収穫したソグからエッセンシャルオイルを作る工場だ。 工場に駆け込むや、3人は手当たり次第に設備を(こわ)し始めた。
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