第4章 セレ

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「何をやっている?!」 工場と畑の責任者である中年男タダムだ。 「見ればわかるでしょ。」 「私達は毒薬なんて作りたくないの。」 「タダムさんも手を引いた方がいいよ。」 エメルとネフルは魔法で、クメルは金属製のパイプで工場を(こわ)しまくる。 「誰か!こいつらを止めてくれ!」 タダムは騒いだが、彼自身も他の労働者達も魔法使いではないのでエメル達に手が出せない。 「アーリン様に知らせなくては!」 タダムは狼煙(のろし)を上げた。これはリーニエを呼ぶ為の合図だ。 アリスドリナでリーニエやディルザに起こった事をタダムは知らなかった。 リーニエ達の代わりとなってアーリンに仕えているのがランスだ。ランスは火の魔法を使うが特に強力なわけではない。視力と鋭い観察力を買われての『出世』だった。 アーリンの城で、ランスはすぐに狼煙に気付いた。 「農園の方だ。何かあったな。」 すぐにアーリンに知らせた。 アーリンは自室でセレと話していたが、ランスの報告に、セレとの会話を中断して立ち上がった。 「農園だと?すぐに行く。」 「農園?」 『行ってみたいです』と言わんばかりのセレに 「お前は安静が必要だ。ここで待っていなさい。」 と留めた。 ただ、ランスには 「くれぐれもフリートから目を離すな。」 と耳打ちした。
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