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アーリンは城を出て農園へと馬を飛ばした。
その背中を見送るとセレは早速
「ランス、城の中を見てまわりたいんだ。」
と言い出した。
「なりません。」
ランスは全く取り合わない。
「歩くだけだ。危ない真似はしない。」
「なりません。アーリン様からあなた様を部屋から出さぬようにと仰せつかっております。」
「何故だ?色々と見て歩いた方が記憶が戻ると思わないか?」
「アーリン様の御命令は絶対です。」
「…では、おとなしく床に着こう。せめて寝付きの良くなる飲み物でも持って来てくれ。」
「はい。少々お待ちください。」
ランスは部屋から離れた。
セレは不服だったが、出ようにも窓もドアもびくともしない。何か魔法がかかっているらしい。
…私にも魔法が使えればな。…待てよ。父上があれだけの魔法使いなんだから、もしかして私も少しは魔力があるんじゃないか?記憶喪失なんだから使い方を忘れてるだけかもな…
ふと書棚に目をやった。
…魔法の使い方が書いてある本は無いかな…
そう思った時
「あっ?」
どこから湧いて出たのか、いつの間にか分厚い本がセレの手の上にあった。
『魔法書』だ。
所有者である魔法使いが見たいと思えば自然に出て来る。これはセレの記憶の有無には関係無かった。
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