第1章 遭遇

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第1章 遭遇

アーリンは『空中宮殿』を出た。 空中宮殿とは山の上に建つ白亜の宮殿だ。 山と言っても、氷河に削られてできた剣のように尖った岩の山だ。そのてっぺんに、いったいどうやって運んだのか、ふんだんに白い大理石が使われた宮殿が建っている。 その建物がアーリンの居城だ。 重厚な門が開かれ、煌びやかな鞍を付けた馬が歩み出た。(またが)っているのがアーリンだ。 後からついて行くのはディルザだけだ。他に護衛や従者はいない。 「行くぞ!」 「はい。」 剣のような山の急斜面を馬で一気に駆け降りる。直角かと感じるほどの急な傾斜だ。アーリンの魔法で護られているから落ちる事は無いのだが、大抵の者は絶叫する。 しかしディルザは無表情のままだ。黙ってアーリンについて行く。 ディルザは爬虫類人。いわばトカゲ男だ。全身に細かい鱗がある。かつてアーリンに滅ぼされた国の出身だ。爬虫類人としての特殊能力と、火と水の魔法使いである事でアーリンが従えている。 一つの絶壁を下り終わっても踊り場のような僅かな平面を経て、すぐ次の絶壁だ。それを何度か繰り返すと樹々が多くなって山肌の感触が少し変わり、水の音が聞こえた。 「もうすぐだ。」 セレ達のいる発光渓谷『アリスドリナ』は目前だ。
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