三品目:お雑煮/箱根美山

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 覚悟を決めて立ち上がり、トレーナー(いまはスウェットって言うんだっけ?)の上下から私服に着替える。  チェックのシャツに淡い色のVネックのニット、下はベージュのチノパン。これが僕の休日スタイルだ。  薄い色ばかり着るのは、花さんと一緒にいると、どうしても毛が体のあちこちにつくから濃い色の服だと目立ってしまう。目立つと気になって思い切り遊べないから、薄い色の服を選んで着ているのだ。  次に敷いていた布団を畳んで押入れに片付ける。花さんが引っ張っていった掛け布団はカバーを外し、あとは畳んで枕と一緒に押入れにしまう。  掛け布団カバーを持って自室を出て、最初に向かうのは洗面所だ。洗濯かごを覗き込むと何も入っていない。ひとまず掛け布団カバーを洗濯機に突っ込んで、洗剤を入れてスイッチを押した。  次いで顔を洗う。寒いからお湯を出そう……温かいお湯で顔を洗って、ほんの少しだけ伸びた髭をシェービングクリームをつけてからひげ剃りで剃って、もう一度顔をすすいだ。ツルッとした頬と顎をひと撫でしてタオルで顔全体を覆って水滴をくまなく取る。  よし、これでいっかな。 「ワンッ!」  花さんがひと鳴きして、僕の後ろから膝裏をおでこでつついてくる。  僕の身支度ができたら次は自分の朝ご飯だってわかっているんだよね。こういうところが、賢いというかしっかりしている。 「すぐ準備するからね~」  台所に行って、花さん用のドッグフードやオヤツを入れてあるストッカーから、いつも食べてもらっているフードを袋ごと取り出して振り返ると、『コトン』と音がして僕の目の前に空っぽのお皿が置かれた。  花さんはご飯の時間になると空っぽのお皿を持ってきてくれる。そこに計量カップで一食に必要な分だけ出して入れてあげると、花さんはカップの動きを目で追いながらも座ったまま待ての姿勢を取った。 「まだだよ、片付けるからね」  先にフードと計量カップをストッカーに戻し、花さんに向き直る。花さんは、まだじっと待ての姿勢のままでいる。  うーん、えらいなぁ。 「花さん、よし」 「!」  尻尾をパタパタ振ってお座りの姿勢からグンッと前のめりに立ち上がった花さんが、お皿に鼻先をつっこんでパクパクと食べ始めた。
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