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「お待たせ~。じゃあ行こっか!」
玄関で靴を履き、花さんと一緒に外へ出る。
戸締まりをして花さんの首輪についているリード用の金具に、リードを繋いで、持ち手をしっかりと握った。
僕より軽い花さんだけど、大型犬だから引っ張る力が結構強い。花さんはちゃんと指示を守ってついて歩いてくれるけど、人懐っこいからなのか他の犬や興味を示してくる人間には寄っていってしまう。
急に飛びかかったりはしないから、その点は安心なんだけどね。
「花さん、これから駅前のスーパーに行くからね。スーパーは花さんを連れて入れないから、外で待っているんだよ。すぐ戻るね」
「ワフッ!」
家を出て、徒歩で駅前にあるスーパーに向かう。
花さんを連れてスーパーに行く時は、〝ワンちゃんお留守番用ポール〟を設置しているスーパーへ足を運ぶようにしている。
住宅も多く、ペットを飼っている家も多い地域だから、お店側のそういう心遣いは、正直ありがたい。
毎回繋ぐ場所が決まっていれば、連れてこられる側も、連れてくる側も、迷いが少なくて済むから。
家から駅前までを一定のリズムで歩く、花さんと僕。学生の頃からずっと同じ歩調だ。冬の風を感じながら歩くこと15分──目的地のスーパーにたどり着いた。
「ついたー」
「ワンッ!」
スーパー・倉屋敷──地域では一番大きなスーパーだ。
四階建てになっていて、二階から上は洋服のお店とかドラッグストア、眼鏡屋さんや本屋さんなんかのテナントも沢山入っている。
花さんが安全に待てるようにお留守番用のポールがあるエリアに向かう。
「えっとお留守番ポールに花さんを繋いで……よし、これでいいかな。じゃあ買い物してくるね。いい子で待ってて」
「ワフッ!」
花さんは尻尾を振りながらひと吠えし、そのままお座りをした。
くりくりとした目が僕を見ている。
まるで「待ってるから早く行ってらっしゃいな」と言われているみたいだ。
(うーん……やっぱり花さんはしっかりものだね)
頬をチョイチョイとかいて、僕はスーパーへと向かった。
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