三品目:お雑煮/箱根美山

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「ありがとうございましたー」──店員さんの挨拶を背に、僕はカゴに入った会計済みの商品をサッカー台に運ぶ。必要なものしか入っていない、カゴの中を上から覗き、広げたエコバックの中に移した。 (小松菜、鶏モモ、大根、にんじん、なると、食パン──あとは夜の分でハンバーグ弁当。お餅は買い置きがあるし、大丈夫)  エコバックに全部詰めると空いたカゴをカゴ置きに戻して店を出る。 (すぐ戻るって言ったのに結構かかっちゃったな……花さん、待ってるよね?)  気持ち早めの足取りでお留守番ポールがあるエリアに向かうと、はしゃぐような声が聞こえてきた。 「うははは! お前、ほんっと人懐っこいなー! でっかくてふわふわで、めっちゃカワイイじゃん!」 「ワウッ! ハッハッ」 「うちもなー、食いモン屋やってなきゃお前みたいなでっかいの飼えんだろーけど……あー、でも六人兄弟の末っ子じゃ、イヤか!?」 「ワンッ!」 「あはは、嫌だってよ! 正直なヤツぅ!」    地べたに座り込んで、花さんの頭をこれでもかってくらい撫で回していたのは、有名スポーツメーカーのジャージを着た、高校生くらいの男の子だった。花さんにじゃれつかれながら、顔を舐められて豪快に笑っている。  弓なりに弧を描いた目元、褐色色の肌、聞いたことのある声……もしかして。 「大海原(わたのはら)、君……?」 「んぁ? 関所先生じゃん! なになに、こんなトコでなにしてんの!?」  恐る恐る呼びかけると、花さんにのしかかられながら顔を上げた男の子が目を見張る。そしてにゃはは、と独特の笑い声を上げながらまくし立てるように尋ねてきた。
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