三品目:お雑煮/箱根美山

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「どうすんだ? それ」 「火が通ってるかは指でちぎれるかでわかるから、それを試すんだ」  大海原君が首を傾げる横で実践する。うんうん、ちゃんと火が通ってる。 「大根と人参が煮えたら、お出汁を入れて鶏ももとお酒を入れる」  スティックタイプの顆粒だしを手に取り、封を開けて鍋にサラサラと入れる。この顆粒だしは塩分が入っていないタイプ。お酒と鶏モモを入れてお肉に火が通るまでまた煮込む。  お出汁を入れたから香りが飛んでいかないように弱火にして、お肉の色が変わったら小松菜の茎の方を入れる。 「葉っぱは使わねぇの?」 「小松菜の葉はすぐに火が通るから、最後に入れるんだよ」  大海原君の質問に答えて、火が通ってしんなりした小松菜の茎を一つ菜箸で摘んで取り出した。ついでに、鶏モモも二つくらい取る。 「一旦火を止めて、鶏ガラスープの素、お醤油、あとお塩を加える」 「おー! なんかうまそうな匂いしてきたー!」 「ちょっと味見してみてくれるかな?」  新しい小皿にほんの少し汁をすくって入れてから、大海原君に手渡す。  受け取るなり『フーッ』と冷まし息を一つ吹いて、大海原君は汁を『ズズッ』と啜り込んだ。 「どう?」 「んめぇ~!! もっと飲む!」 「はは、じゃあ味はこれで大丈夫かな。そしたら先にお餅を焼こう。えっと、トースターで焼くから……あ、大海原君はお餅何個食べる?」 「オレっちは4こ!!」 「四個ね。……入るかな?」  個包装になっている切り餅の袋を開けて、一つずつトースターに並べてもらう。ひとまず大海原君の分を先に焼くことにした。 「んぉ? どったー、花?」 「クゥ~ン」  トースターの前でお餅が焼けるのを待っている大海原君の、ジャージのスボンをくいくいと引っ張る花さん。  花さんも、なにか食べたいみたいだ。
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