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「お餅焼けたね」
お皿に焼けたお餅を移して新しいのを二つ入れる。僕は二つぐらいがちょうどいい。
「あとは小松菜の葉っぱとなるとを入れて、沸騰直前まで温める」
よけておいた小松菜の葉と、なるとを入れ鍋のフチがプツプツと沸いてきたところで火を止める。箱根家定番の、お正月の香りが台所に広がる。
「せんせー、花がオヤツ食い終わったぜ!」
「そしたらお皿に水をあげようかな。はいこれ、花さんにお願い」
「はなー、水だぞー!」
洗っておいた花さんのお皿に水を汲んで大海原君に渡すと、ジャーキーを食べ終えて満足そうにしている花さんのところへ運んでってくれた。
花さんは置かれたお皿の水をペロペロ舐めて十分水分補給すると、鼻先でお皿を大海原君の方へ押しやる。片付けてねってことらしい。やっぱり賢いね。
「ごちそーさまだって」
「ありがとう。それじゃあ、お雑煮できたし、僕たちもお昼にしようか」
「やったー! お雑煮ー!!」
用意したお椀にお餅を入れて、お雑煮の汁を入れる。
大海原君が早く食べたいとせっつく中、どうにか居間へお雑煮を運び込んで、二人でこたつに入る。
花さんが後ろからついてきて、居間の入口に陣取った。
どうやら僕たちのランチタイムを見守る気みたい。
「じゃあ食べよう。ご一緒に」
「いっただきま──す!」
「いただきます」
ふたりで手を合わせてから、温かい汁を一口すする。
「はー……あったかいなぁ」
「こたつで食う雑煮、サイッコ──!」
ひとり静かに過ごすはずの休日に笑顔が咲く。
お雑煮の温かさとその笑顔に、僕の心がホッとしたのは、ここだけの話。
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