四品目:柚子ジャム/曇狼月冴

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「とりあえず、彩斗にあげる分とゆず湯の分だけ別のビニール袋によけといてー……よしこんなもんかな」  柚子がたっぷり入ったビニール袋の口を縛り、ひとまず玄関棚に置いてくる。常温でも保存はできるけど、リビングは暖房がついているから、なるたけ涼しいところのほうがいいはず。  キッチンに戻り、袖を捲くってまずは手洗い。次に容れ物の準備だ。瓶詰めのオイル漬けやジャムを買った時のを捨てないで取っておいたはず……。 「あ、あったあった」  保存容器なんかを入れている引き出しから様々な大きさの瓶を取り出す。  布巾を敷いた鍋いっぱいに水を張って、コンロの火をつけた。お湯が沸くあいだに一回瓶と蓋を丁寧に洗う。 「自家製のジャムはカビたりするのを防ぐ目的で、こうやって容れ物を煮沸消毒するんだよ」 「まぁ、そうなのね。コンポートはガラス容器に入れていたから、容器を洗うくらいで済ませていたけれど……ジャムはとても繊細なのねぇ」  母さんがしみじみ言う。すぐ食べきるならそこまでちゃんとしてなくてもいいだろうけど、やっぱり長く持たせたり人にあげたりするなら丁寧にしないとね。鍋のお湯が沸いたのを確認して瓶と蓋を湯に沈める。  タイマーを10分にセットしてシンクに戻ると、今度は柚子を一つ一つ丁寧に洗っていく。自家製栽培ってことは無農薬だろうし、洗剤を使ってまで洗う必要はないかな。丁寧に洗えばそれなりに時間もかかる。  たっぷり時間をかけて柚子を洗い終えると、別のザルにてんこ盛りの柚子山ができた。 「えっと、絞り器どこだっけ?」 「すぐ出るところにあるわ、はいこれ」  母さんが食器棚を開けてすぐの所から絞り器を出してきて渡してくれる。これが今回の主役だ。 「まずは、包丁の先で(へた)を弾いて落として、それから半分に切る」  緑色の蔕を落として半分に切ると、淡黄色の果肉が顔を覗かせる。 「切ったら絞り器で果汁を絞る」  絞り器の頂点に半分に切った柚子の中心を乗せ、そのままギュギュっと捩じりながら絞ると、絞り器の溝を伝って果汁が受け皿に溜まっていく。ポロポロと外れた種も受け皿に一緒に落ちていく。
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