四品目:柚子ジャム/曇狼月冴

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「種が」 「あとで茶濾(ちゃこ)しで果汁を濾すから、このままで大丈夫。母さん、柚子の蔕取って切ってくれる? 俺が絞るから」 「わかったわ」  さすがにこの量を捌くなら人手があった方がいい。力のいる仕事は俺が、軽作業を母さんに任せてどんどん柚子を捌いていく。  茶漉しを出してガラスのボウルに引っ掛け、果汁が溜まった受け皿からボウルに果汁を移す作業を加えながら二人で黙々と作業を進めると、柚子が入ったザルはあっという間にからっぽになった。 「その種は捨てちゃうの?」 「これはね、ペクチンって言ってジャムにとろみをつけるのに重要な成分がよく出てくるんだ。だから捨てないで煮る時に使うよ。お茶っ葉を入れるパック残ってたかな?」 「あ、あるある! 持ってくるわね!」  母さんが今度はリビングにあるアンティークの食器を入れている食器棚の引き出しからティーバッグ用の袋を持ってくる。一枚取って、 「さすがにこんなにいらないから三分の一くらいスプーンで取って……」  スプーンで必要な分だけ種を掬い、ティーバッグの中に入れる。片側を返して蓋をするようにしてから小皿の上に置いた。 「これであとの種は捨てちゃって大丈夫」  ゴミ受けに種を捨ててから次の作業に移る。 「大きめの鍋にお湯を沸かしておくあいだに、内側の薄皮と白いワタを取り除く」  絞ってフニャフニャになった薄皮はすんなりと剥ける。その奥から現れた白いワタはスプーンでできる限りこそげ取った。 「これを丁寧に(こそ)げておくと、苦味が少なくて済むんだ。柚子だけじゃなくて、マーマレードとか作る時もおんなじ」 「そうなのね! つーちゃんは物知りねぇ」  母さんが声を弾ませながら薄皮を剥く。真っ直ぐ褒められると、ちょっとだけくすぐったい。俺はムズムズする気持ちを隠すように目の前の作業に没頭した。
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