一品目:わかめの味噌汁/姫乃井尚斗

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 こういう時、思い出すのは亡くなった祖母の言葉だ。 「お米は水が綺麗になるまで研ぐ……」  水桶の水を変えながら米を研いで、研ぎ汁が濁らなくなったところでようやくザルをあげた。炊飯釜を持ってきて洗った米を移し、規定量の水を入れて炊飯器の蓋を閉める。 「17時炊きあがりになるようにタイマーをセット……」  ピッピッと操作音とさせつつボタンを押していくと、炊きあがり17時と表示が出て予約ランプが点灯する。これでお米の準備はできた。 「味噌汁……中身、なににしよう」  首を傾げて考える。  昨日はネギと豆腐だった。その前はしじみ、その前は餃子だったから合わせてニラ玉スープにした。そういえば、しばらくわかめを使っていないことに気がつく。 「わかめ……」  乾物類を一同に仕舞ってある戸棚を開く。  焼海苔や昆布、鰹節や桜えびや干し椎茸などありとあらゆる乾物が一緒くたに仕舞ってあるこの棚は、なんとも例えがたい匂いがする。  出汁のようでもあるし、磯の香りのようでもあるし……ほんの少し顔をしかめて〝乾燥わかめ〟と書かれたパッケージの袋を取り出した。 「あとは……顆粒だし、味噌。あ、ほんの少しだけ油揚げ入れよう……ネギは、じーちゃん好きだし入れよう」  野菜室から使いかけの長ネギを取り出し、冷凍庫から刻み油揚げの袋を取り出した。  次いで冷蔵庫から味噌の入った容れ物と、調味料棚から顆粒だしを取り出した。この顆粒だしは祖母が気に入って使っていた無添加の鰹だしである。 「まず水を600ミリリットル小鍋に入れて、顆粒だしは小さじ2杯、火にかけてぐらっと沸いたら火を止める」  顆粒だしは水300ミリリットルに対し小さじ1だ。だから、水分量が倍なら小さじ2。これも祖母が教えてくれた。
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