四品目:柚子ジャム/曇狼月冴

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 母さんの手際の良さも相まって皮の下処理は順調に済んで、白いワタの殆どを取り終えた皮を綺麗にすすぐ。次は皮を千切りにする作業だ。  作業の手を移そうとした瞬間、煮沸消毒のためにセットしておいたタイマーが鳴り響く。コンロの火を止めて、トレイに別の綺麗な布巾を広げて敷いてから、トングを使って鍋から瓶を取り出す。瓶の内側に入っていたお湯を捨てて、水滴だけが残る熱々の瓶をトレイの上に置いていく。 「あとは自然乾燥させるから、これはダイニングテーブルの上に置いておくね」  トレイを持ってリビングのテーブルへと置くと、再びキッチンに戻り、今度は柚子皮てんこ盛りのザルと向き合う。 「あんまり大きいと食べる時に食べにくいから、半分に切ってから重ねて千切りにするよ」  まな板の上で柚子の皮を細く刻んでいく。ある程度刻んで山になったら空いたボウルに移して──何度も何度も繰り返してついに最後の皮を切り終える。 「つーちゃん、お湯沸いてるわ」 「そしたら、この刻んだ柚子をお湯の中でさっと茹でる。だいたい1、2分くらい。茹でこぼしって言うんだけど、これを3回くらい繰り返して皮の苦味抜きをするんだ」 「まぁそんなに? ユズって思っていたより苦いのねぇ。ミカンに似ているし、果物だと思っていたのだけれど……」 「柚子は薬味や風味づけに使われることが多いから、流通分類的には野菜に属するみたい。でも、植物分類的には果物なんだって。面白いよね」  セットしたタイマーが鳴り、コンロの火を止めてシンクに置いたザルの上に茹でた皮を一気にあける。  空になった鍋に新しく水を汲み、再びコンロの火をつけた。 「せっかくジャムを作るんだから、スコーンとか焼きたいなぁ。クロテッドクリームも一回手作りしてみたいと思ってたんだ」 「クロテッドクリームは、日本では手に入りにくいって聞いたわ」 「そうだねー、売ってるお店が限定されてるから。まぁ作るのもちょっとコツがいるけど、材料は生クリームだけだし時間があればできるしね」  そんな話をしていたら鍋からもうもうと湯気が上がってくる。どうやら二回目のお湯も沸いたみたい。  ザルに入れておいた皮の水分を軽く切って、また沸騰した鍋に戻す。タイマーを2分セットして、菜箸で軽くかき混ぜる。
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