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「なんだか花びらが踊ってるみたい。黄色が鮮やかでキレイだわぁ」
「茹でこぼしていくと皮が透けてくるんだ。お湯の濁りもなくなったらジャムが煮れるよ」
タイマーの音でもう一度茹でた皮をザルにあける。
一枚菜箸で摘んで掌に乗せ、食べてみる。予想していたより遥かに苦味が少ない。このまま煮ても十分ジャムとして食べられそうだ。
「んー……思ったより苦味が早く抜けたな。これでいいかも?」
「じゃあ、もう茹でこぼしはおしまい?」
「でも俺が大丈夫ってだけだからなー。母さん、ちょっと食べてみて」
もう一度菜箸で皮を摘み、差し出された掌に乗せると、母さんがぺろりとそれを舌先で口に運ぶ。
「甘くないマーマレードみたい! ぜんぜん苦くないわ!」
母さんが目をまあるくして俺を見てくる。純真無垢って言葉がピッタリ当てはまるような表情に、思わず表情がほころんだ。
「母さんが大丈夫なら拓も食えるかな。じゃあこれで茹でこぼしはおしまいにしよ。そしたら、この皮がどのくらいあるか量る」
デジタルスケールを出してきて空っぽのボウルを乗せ電源を入れる。0と表示されていることを確認して、その中に茹で上げた皮を全量投入すると、スケールが400グラムと表示された。
「ジャムの基本はフルーツに対して砂糖が50パーセントから100パーセントだからー……400グラムってことは50パーセントで200グラム。はちみつも入れるし十分かな」
柚子皮の入ったボウルをスケールからおろして、今度は別の空っぽなボウルをスケールに乗せる。
スケールの表示を0に戻して、グラニュー糖を袋からボウルに注ぐように入れていく。
「189、195……200!」
ぴったりの数字で袋を持ち上げると、グラニュー糖は新雪の雪山の様にキラキラと輝いた。
「さっきの鍋に柚子の皮とグラニュー糖を入れて、絞った果汁は大さじ2、はちみつも大さじ2加える」
鍋に柚子の皮を戻してその上からグラニュー糖を全体にまぶすようにかけ、柚子の果汁を計量スプーンの大さじ2杯分すくい鍋に入れた。
次にはちみつも計量スプーン大さじ2杯分出して鍋に入れる。
「あとはティーバッグに入れた種を一緒に入れてー。よっし、これで準備できた。あとは煮るだけ!」
コンロの火をつけ、弱火で全体が馴染むように木べらで混ぜていると、次第に鍋のフチがクツクツと煮えてくる。湯気が上がってくると、柚子のいい香りがキッチンに広がっていく。
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