五品目:ちぎりはんぺんとわかめと三つ葉のお吸い物/秋月朔夜

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「えっとー、わかめわかめ」  乾物やらをしまっている戸棚から乾燥わかめの入った瓶を取り出して、全部まとめて流し台の上に置いた。 「したら、今日作るのははんぺんとわかめと三つ葉のお吸い物な。まず三つ葉を洗って1センチ幅に切る。ハサミ使うて切ると簡単やで。先に葉のとこ落とすと茎切る時楽やで」  ザルにあけた三つ葉を洗い根を切ってから葉を落とし、茎をハサミで短く切る。 「次にはんぺんを半分。袋のまんま切ってええよ。半分にしたはんぺんを一口大にちぎる」  オレのひとくちに合わせるとデカくなりすぎるから、倭斗のひとくちに合わせてはんぺんをちぎる。はんぺんは半分しか使ってねぇのに小さな容れモンいっぱいになった。 「で、今回は白だしだけ使うから、ラベルに書いてある汁物の比率で鍋に用意する。白だし1に対して水9やから……白だしは50ミリリットル、水は450ミリリットルな」  計量カップを渡される。50のメモリまで白だしを量って鍋に入れてから水を450量って鍋に入れる。 「そしたらコンロの火を点けて、汁を沸かす。沸いたらわかめを小さじ1、三つ葉の茎を加える」 「ん」  指示通りに湯気の立った鍋に乾燥わかめと三つ葉を入れると、倭斗がコンロの火を弱め、 「最後にはんぺんと三つ葉の葉の部分を入れて、1分待つ」  そう言う。これも指示通りにこなすと、台所にいい匂いが漂ってきた。 「ちょっと味見しよか」  小さなお玉でほんの少しだけ汁をすくい、小皿に乗せるとオレに寄越してくる。少しだけ冷まし息を吹いてソレをすすりこんだ。 「どうや? 味薄ない?」 「うめぇ」  塩気はちょうどいい。恵方巻食うならこんくらいでいいんじゃねぇのか? そんな気持ちで倭斗の顔をじっと見ると、お得意のフニャ笑いを返してくる。   コンロの火を止めて用意した二つの椀に盛り付けた。  本当に簡単だったな──。
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