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六品目:ブランデーホットココア/喜多里黎斗
※注意※
お酒に関する話題やお酒そのものを扱う描写がありますが、未成年者の飲酒を推奨するものではありません。
* * * * *
「んじゃ、お疲れ様っしたー」
「おう、気をつけて帰れよ!」
オーナーに見送られ、バイクショップでのアルバイトを終えて帰路につく。
バイク通勤もすっかり板について、通り慣れた街道を愛機で走るのが日常に加わってから約半年──季節は冬を迎えていた。
冬用のジャケットにネックウォーマー、グローブも冬用の物を使っているけど、どんなに完璧な防寒をしたって風を受けて走るバイクに乗っている以上、冷えからは逃げられない。
マンションの地下駐車場に滑り込み、バイク専用の駐車スペースにバイクを停めて降りる頃には、俺の体は芯から冷え切っていた。
「さすがにさっむ……」
バイクは好きだ。冬も好きだ。だけど、「寒いのが平気か?」と聞かれたら「いいや」と答える。まぁ……暑いのが平気なわけでもないんだけどね。
ヘルメットを脱いでグローブを外し、到着したエレベーターに乗り込み自分が住んでいる部屋の階層ボタンを押す。
『ウィィン』と電気系統の動作音がして、俺の乗ったエレベーターが重力に逆らって上へと昇っていく。いくらも経たないうちにエレベーターは『ポーン』と音を鳴らして停止した。目の前の扉がゆっくり開かれる。
地下から一階層上がったんだから、停止したのはマンションの一階エントランスホール。どうやら誰か乗る人間がいたみたい。
そんなことを考えながら視線を下げたまま奥の壁に寄りかかっていると、目の前に影ができた。
「黎斗?」
「え?」
突然名前を呼ばれて思わず視線を持ち上げる。
「やっぱり黎斗じゃない! なによ、アンタも今帰り?」
俺の顔を確認するなりそんな風に言って笑う、よく見知った女の人。
その背後で、開いていたエレベーターの扉が、ゆっくりと閉まっていった。
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