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夕飯を終え、しばらくソシャゲを楽しんでから風呂を済ませ、寝る時用のジャージを着て水分補給のためにリビングへ行くと、ソファーに座って背中を丸めている天華ちゃんの姿が視界に映り込んだ。
どうやら足のネイルを変えてるみたい。
でも塗りにくい部分なのか「またよれたー!」なんて言いながらソファーの背もたれに頭をつけて天を仰ぐ。
「あっ、ちょうどいいところに! 黎斗~、ちょぉーっとお姉ちゃんのトコ、来てくんないかなー?」
いいもの見つけた、と言わんばかりに軽口で俺を呼びつける。
「……どーせ拒否権ないんでしょ」
アヤに頼み事をする時は美味しいお酒に合う美味しいものを食べたい時で、俺に頼み事をする時は身なりに関することで詰んだ時だ。
それをわかっているからこそ、俺たちは天華ちゃんのお願い事を絶対に断れない。
なんたって、姉の頼みなんだから。
天華ちゃんの前まで行ってソファーの前にしゃがみ込む。
綺麗なターコイズブルーのネイル。天華ちゃんは色白だから、きっと似合うだろうな。
まっ、真冬で裸足になるわけでもないのに、隠れちゃうところにネイルなんてよくやるよ、とは思うけど。
「塗って♡」
「言われると思った。はいはい、やりますよー」
塗りかけの右足を丁寧に塗って、全く手を付けていない左足の爪を、小指から丁寧に塗っていく。
真上から作業を眺めつつ、天華ちゃんが感心したような溜息を零した。
「相変わらず、速いし綺麗に塗るわよね~。黎斗って、自分の爪を塗る時もこんなに速いの?」
「まぁそれなりじゃない? 俺、自分に塗る時は机に手置くし。待つの嫌いだから速乾タイプのポリッシュ使ってるしねー。ほら、速乾タイプはさっさと塗らないとすぐ乾いちゃうから」
「あー、なるほどね~。どうりで速く塗るのに慣れてるわけだ」
「はい、おしまい。あとは乾くまでじっとしてんだよ? 動き回るとまたよれるから」
マニキュアの蓋を閉めて、ローテーブルの上に置く。
これで俺は晴れて自由の身だ。
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