六品目:ブランデーホットココア/喜多里黎斗

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「えっとー、あと砂糖と塩と牛乳、父さんがたまにしか呑まないブランデー……」  天華ちゃんみたいに大酒飲みじゃないけど、父さんもお酒を飲むから時々買って帰ってきたりする。  けど、買ったことを忘れていたり、開けたのに飲まなくなってダメにしちゃったり、なーんて失敗も多いから、父さんがダメにする前に天華ちゃんが飲み切ったり、アヤがお菓子作りに使ったりするようになった。  だから俺が使っても問題ない、ハズ。  小さな鍋とマグカップを二つ用意し、ポットが保温になってたから再沸騰のボタンを押す。 「まずはー、ココアペーストを作る」  小鍋にココアパウダーと砂糖と塩をひとつまみだけ入れ、ポットからお湯を少し汲んで材料を入れた鍋にとぽとぽと注いだ。木さじでよく混ぜてしっかりペーストができたら、次は牛乳を入れる。 「えっと、二人分だから300くらいでいっか」  マグカップ一杯分の牛乳を注ぎ、コンロの火をつけて牛乳にココアペーストがしっかり溶けきるように混ぜ合わせる。これがちょっと根気がいるんだよなー。  白い液体にココアペーストが溶けてきてだんだんと茶色に変わってきた。キッチンに漂う、ココアのいい香り。 「こんなもんかなー? そしたら火を止めてマグカップに注いでー……最後に天華ちゃんの分だけブランデーを入れる、と」  寝る前だし風味づけ程度でいいかな。  ティースプーンに二杯、ブランデーを注いでそのままマグカップにスプーンをつっこんで混ぜる。  あー……めっちゃいい匂いじゃん。 「俺はブランデーの代わりにマシュマロ乗せよーっと」  おやつの入ったストッカーからマシュマロの袋を取り出して、中から小ぶりなマシュマロを四個くらい掴んでマグカップに浮かべる。  ココアの香りとマシュマロが溶け出して甘い香りが鼻先をくすぐった。
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