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八品目:豚の生姜焼き/大海原太鳳
「たっだいま──!!」
玄関を開けるなり帰りの挨拶。今日も変わらず静かな家だ。
うちの実家は弁当屋で、オレっちが帰る時間はだいたい父ちゃんも母ちゃんも店に出てるから、居間のちゃぶ台には夕飯が置いてある。いつもならいー匂いが漂ってくんだけど……。
オンボロなお陰でナントカ張りでもないのに音の鳴る廊下を歩いて居間に行くと、夕飯の代わりに置いてあったのは小さな紙切れ一枚。
雑な字で、
『商店街の寄り合いに行ってきます。ご飯は各自で』
なんて書いてある。
この、きったねぇけどギリギリ読める字は父ちゃんだな? 慌てて出てったに違いない。
「なんだよー、夕飯ねぇんじゃん! 腹減ってんだけどなぁー」
部活がある日は腹が減りすぎるから、うっかりコンビニなんかに寄ったら散財間違いナシ! だからこうやって一分一秒でも早く帰って飯にありつくのがオレっちの幸せなんだけど……なんだか肩透かしを食らった気分だ。
言っとくけど、何も作れないってワケじゃあないぜ? さすがにそこは弁当・惣菜屋の息子だかんな、ガキん頃から父ちゃん母ちゃんが店に出てるおかげで、家のコトは誰かがやんないといけない状況だったし、ひととおり家事は出来る。中学ン時なんて、家庭科の授業でよく驚かれたモンよ!
オレっちの上には五人も兄姉がいるのに、最近じゃ忙しいのか、なかなか家のことをやってくれない。
一番上の姉ちゃんは結婚して家出て隣町に住んでっし、すぐ上の姉ちゃんは受験生でピリピリしてっし(ついでに部屋から出てこねぇしな)兄ちゃんたちはそもそも帰りが遅えしよぉー。
「…………」
ポクポクポク、チーン。
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