八品目:豚の生姜焼き/大海原太鳳

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「オレっちがやるっきゃねぇじゃんか──!!」    思わず叫んじまった。はずみで手に持ってた父ちゃんのメモがグシャってなる。  頭ン中で坊さんがポクポクポクポク、あのあれ、お経とか読む時に叩いてるやつ! アレをなんべんも叩くから、もーむなしい。自分の夕飯を自分で作んなきゃなんねぇってのがもー悲しい。  オレっちは腹が減ってんだっつの!! いますぐご飯が食べたいの──!! 「なんか、叫んだら余計に腹減った……ナンも食わないとか無理だしやるかぁ」  とりあえず炊飯器を開けてっと……ツヤッツヤの白米が顔を出す。よしよし、米はオッケー。次に開けるのは冷蔵庫。冷蔵庫に入ってるモンは勝手に使っていいし食っていいことになってっから、適当な材料を見繕う。えっとー……。 「ガッツリしてるモンがいいよなぁ。豚肉あるし、生姜焼きにでもすっかな! したら豚肉とぉー、生姜はぁー……お、おろし生姜があんじゃん、これ使お。玉ねぎはぁー……めんどくせぇし、今日はいっか!」  材料をふたつだけ取って冷蔵庫を閉める。  母ちゃんが作るやつは玉ねぎとか入ってっけど、皮剥いたり面倒だし豚肉と生姜さえありゃ生姜焼きだもんな! 細けぇことは気にしない、それがオレっち!! 「あとは調味料か。しょうゆ、さとう、酒! 生姜焼きはってな! ってどー書くんだっけ? ま、いっか!」  流し台の下を開けて必要なモンだけ取り出して扉を閉める。あとはビニール袋と油! 全部をまな板の上に置いて腕まくり。 「よっしゃ作るぞー。まずはビニール袋に豚肉とおろし生姜、調味料をいれてー……袋の口を縛って揉む!」  こうやってビニール袋に入れて全部揉むと包丁もいらないし洗い物もほとんど出ない。  この作り方は母ちゃんや姉ちゃんがボウルとかに入れて作ってんのを見て、「ボウルのトコをビニール袋に変えたら楽なんじゃね?」って思ったのがきっかけだ。  オレっちなかなか頭イイじゃんね! 「次はぁー、フライパンをあっためてー油入れてー、さっきの肉を入れる!」  コンロにフライパンを置いて火を点け、サラダ油をだいたい大さじ1くらい? 入れて、さっき肉を入れて揉んでたビニールを、その上でひっくり返した。ジュワァーって音がして、しょうゆと生姜の焼けるいい匂いが台所に広がってく。  くぅ~! これこれ!
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