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「肉を箸でバラしながら火が通るまで炒める!」
豚肉はちゃんと火ィ通さないとダメだって母ちゃんも姉ちゃんも言ってるしな!
鼻歌交じりに箸を動かしながら肉を炒めていくと、だんだん色が変わってくる。さとうが入ったしょうゆだれも煮詰まってきていい感じだ。
うまそー、早く食いてぇ!!
「うっし、こんなもんかな!? 赤いとこはなさそうだし、こんなもんだろ!」
コンロの火を止めて食器棚からほんの少し深めの皿を持ってきて、フライパンの中身をあける。もわもわ湯気に乗って、甘辛のい~匂い!
ちゃぶ台に皿を置いて今度は茶碗を持って炊飯器の前へ。てんこ盛りに炊けた白米を盛っていそいそちゃぶ台へ戻る。
あ、お茶とお箸! これも出してきてちゃぶ台に並べ、ようやく一息つけるぜ!
「うっしゃ、食うぞ~!! それでは両手を合わせてー、いっただきまーす!!」
アツアツの生姜焼きでご飯を巻いてひと口に頬張る。
モグモグモグ──……。
「ンッめぇぇぇぇ~!! やーっぱ作りたてはいいわぁ~めちゃくちゃウマい!! ってか、生姜焼きの味キマってっし、オレっち天才じゃね!?」
もう一枚肉を取って口に突っ込んで、今度はご飯をかっこむ。
滲み出てくるさとうしょうゆとちょっとツンとした生姜もいいし、米の甘みもサイッコーだぜ!
「はー、ウマい……幸せだぁ~」
ほぅ、と思わずため息をつく。店が休みの時と違って、ひとりで食ってるっつーのがちょーっと味気ねえけどさ。
「こんど父ちゃんたちに作ってやるかぁ!」
──そんときは、みんなが「ウマい」って言ってくれっといいなぁ。
そんなことを思った。
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