九品目:ピザトースト/長濱亮平

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「手伝わないぞ?」 「わーってるよ!!」  手伝ってもらえないのは百も承知だから改めて言われるとなんつーかこう……腹立つよな。  アキが「ふふ」なんて含みのある笑い声を立ててまた目の前の文庫本に視線を移す。  アキが読んでるのは尚斗から薦められたらしいミステリー小説で、シリーズの、もう四冊目らしい。  オレはミステリー小説とか全然ワケわかんなくて読めないけど、そんな面白いのかね?   アキが黙々と本を読む中、オレは英語の先生が作った問題集を必死で解く。やっとこさ半分解き終わったところで、 「そういや、今日の昼飯なに?」  うちで出てくんのが当たり前、みたいにアキが尋ねてきた。 「えーっと、母ちゃんなんか作ってって……くれるわきゃねぇか、忙しいもんな」  うちの母ちゃんは看護師をしていて、朝も結構早くからバタバタ出かけて行って、夕方頃帰ってくるけど、帰ってきてからもなにかとバタバタ忙しくしている。だから日々の夕飯も前の日の残りとか、冷食とか弁当とか惣菜とか食うことが多い。  オレも部活で遅くて手伝えないから、「母ちゃんがイチから作ったもんが食いたい」なんてワガママは言えないわけだ。  それでも、どんなに忙しくても「少しでも栄養のあるものを」なんつって、汁物だけは作っておいてくれるんだ。  野菜スープとか豚汁とか、具沢山で文字通り『食べるスープ』とか言われるやつ。いつもキッチンに行くと、いい匂いのする鍋がある。それが我が家。 「汁モンならいつもみたいにあるだろうからそれ見て決めるかぁ。冷食かなんかはあるだろ!」  そこらにほっぽっといたスマホを見るとあとちょっとで12時になるところ──飯時にはちょうどいい。 「あとはまた食ったらやるわ。下行こうぜ、メシメシ~!」  アキを連れて一階のリビングへ行くとガラーンとして静まり返ってる。  父ちゃんは会社だし姉ちゃんは今日は昼前からバイトで早いうちから出かけてるから、ホントに我が家にはアキとオレだけ。  キッチンの電気をつけてコンロに近づく。思った通り、大きめの鍋が置いてあって、蓋を開けて中を覗くと、野菜たっぷりのコンソメスープが入ってる。    つーことは、これとなにかプラスで食えるもんがありゃいいってことだ。
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