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「なんか作って!」
「えぇ……」
キラキラとした眼差しで見つめられ、思わず困惑した声をあげると、
「だってアキ、みんなに言わないだけで料理できっじゃん? 寒いしさ、なんかあったけーモン食いたい!」
なんて矢継早に言う。
「って言われてもな……そもそも今日なんか買い置きあったか……?」
どちらの家の両親もシフト制で働く職種のため、週末に家を空けることがままある。
だから、予め食材は多めに常備しているが、生鮮食品はその限りじゃない。買い物をしてきたばかりなら望みはあるが、そうじゃない時は冷蔵庫の中身が寂しい、なんてこともしばしばある。何か作れと言われて、対応できるできないは五分五分の確率だ。
ソファーから立ち、リビングの続きになっているキッチンに向かうと、冷蔵庫に向き合い、観音開きの扉を開ける。
広い庫内に視線を巡らせ、上の段から下の段まで、全ての段を順番に辿り、ひとつの食材に目をつけるとそれを取り出した。
「リョウ、うどんでいいか?」
「うどんいいね! 寒いしあったまりそうじゃーん!」
「他には……」
流石にうどんだけじゃ腹が空きそうだと、もう一度庫内を見回す。
「お、油揚げだ。コイツを煮るか」
ガサガサと音をさせながら油揚げの入ったビニール袋を引っ張り出す。次いで野菜室の引き出しを開ける。
「うどんにはネギ……ネギ……あ、あった」
使いかけのラップにくるんだ長ネギを取り出して引き出しを閉める。
「今日のメニューはきつねうどんだ」
「やったー! きつねうどーん!」
オレのセリフに亮平が両手を挙げ万歳する。
まったく、食えりゃなんでも喜ぶクセに。
手を洗い、まな板と包丁を用意する。まずは煮揚げを作らないと。
雪平鍋を出し、次に金ザルを出してシンクに置く。鍋に水を汲み、コンロにかけて沸騰させる。
「もううどん茹でんのか?」
亮平が高みの見物とばかりにキッチンにやってくる。
自分ではやらないのに、人の作業を見るのは好きらしい。
亮平自身が小柄とはいえ、男二人でキッチンにいたらまぁまぁ狭いが、追い出すとあとが面倒なので害もないしそのまま放置する。
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