二品目:お揚げの甘煮/田原昭彦

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「違う、先に油揚げを煮るんだ。油抜きしないとギトギトになるからな、そのためにお湯を沸かすんだよ」  油揚げの袋を開けて金ザルに沿ってぐるりと一周並べる。  水を張った鍋のフチがプツプツと泡立ってきて、だんだんと気泡が大きくなり、もうもうと湯気を立てながら鍋の中の水が沸騰する。  コンロの火を止め、鍋の柄を持ってシンクまで移動させると、油揚げに向けて一周ぐるっとかけた。 「まず片面。で、ひっくり返してもう片面に残ったお湯をかける」  菜箸で一枚一枚ひっくり返し、全部返し終わったところで残りの熱湯をかける。 「これで終わり?」 「そっ、終わり。次に煮汁の準備だ」  空になった雪平鍋に、水を1カップ、白だし、みりん、砂糖、醤油を入れて火にかける。 「こうやって砂糖を溶かして、みりんの酒精分をちょっと飛ばす。その間に湯切りした油揚げを半分に切る」  まな板にキッチンペーパーを乗せ、油揚げを重ねてからもう一枚キッチンペーパーを乗せて水分を軽く抜き、済んだものを重ねてから半分の大きさに切った。 「あ、よく見る大きさ」 「煮てから切ってもいいんだけど、雪平鍋はそんなに大きくないからな」  コンロの上の鍋を覗き込むと、砂糖が全部溶けて煮汁のフチがプツプツと泡立ち始める。  コンロの火を弱め、切った油揚げを一度に煮汁に加え、菜箸で全体が浸かるように軽く押して沈める。 「えっと、クッキングシートと落し蓋……」  油抜きをしたとはいえ、煮ていけば油は出る。そのためにクッキングシートを一枚、クツクツ煮えてきている油揚げの上に敷く。  その上からステンレス素材の落し蓋を広げて乗せ、さらに蓋を置いた。タイマーを5分セットする。これで火元から離れても大丈夫だ。 「揚げを煮ている間にネギ切るぞー」  使いかけの長ネギを保存しているラップを外し、斜めの薄切りにしてから、ポットに保温してあるお湯を適当な大きさのお椀に汲み、その中にネギを入れ辛味抜きをする。
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