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あけましておめでとうございます
寝落ちした。
正確には、寝落ちして夜中に目覚めて、SNSを延々と眺めているうちに、明け方にまた寝落ちした。
で、今、元日の午前10時31分。天気は、窓の外を見るかぎり晴天。
「体、痛え…」
ソファの足元でうずくまる姿勢で寝ていたみたいだ。体を起こすと、肋骨と肩が痛い。
一瞬、知らない誰かがいると思ってびくりとする。
そうだった。幼なじみにして同居人。
晃士は、昨日来た時と同じ端っこの位置で、座ったまま膝を抱えて顎を乗せる姿勢で眠っていた。
目を閉じて、小動物めいている。
子どもの頃の面影は、やっぱりない気がする。
声はかけないでシャワーを浴びに出て行く。
昨夜は、テレビをつけっ放しにしながら、お菓子をつまんだり、互いに無言でスマートフォンを触ったりしていた。
晃士とはテレビ番組のことで話したりはしたけれど、そう会話が弾んだ記憶はない。
来客用の布団は親が俺の部屋に出して行ったはず。
布団で寝かせてやれば良かったかな。
母親にも叱られそうだ。晃ちゃんがかわいそうじゃない、とか何とか。
タオルで頭を拭きながらリビングに戻ると、晃士は起きていた。
目を開いていて、姿勢はさっきの体育座りのまま。
「おはよ。お前も風呂入る?」
「うん。はぶらしってある?」
「あー、無いかな。後で買いに行けばいいよ」
今日は何をすればいいんだっけ。
「棚のタオル使っていいから。風呂そっち」
正月独特のぼんやりとした空気のせいか、頭が回らない。
結局またフローリングに座り込む。
「洗濯、俺やっていいなら、やっちゃおうか」
しばらくしてから、晃士がドアからひょいと顔をのぞかせた。
そういえば、やるべきことは料理だけではない。
洗濯機って、人生で一度も使ったことがないかもしれない。
脱衣所の方へ行く。
「操作方法わかる?」
洗濯機の前で額を突き合わせると、シャンプーの匂いがした。
同じシャンプーを使っているから同じ匂いのはずだ。家族でもないのに。
「俺わかんないかも」
パネルにはおまかせ、わたし流、などと謎のような文字が並んでいる。
「たぶんわかる。俺、家で洗濯当番だから」
そういえば晃士は母親と2人暮らしなのだった。
料理はできないけれど他の家事は手伝っているらしい。
そしてまたリビングでぐだぐたすること数十分。
洗濯機から電子音が聞こえた。
「ベランダに干していい?」
「乾燥機ついてると思うけど」
「日に当てた方が気持ちいいよ。今日、晴れてるから」
そういうものだろうか。
反対する理由もないので、ランドリーバッグに洗い上がった服を詰め込んで2人して2階へ上る。
俺の部屋を通ってベランダに出る。
「休みの日の朝でも、親が黙って入って来るからウザいんだよ」
言いながら、すばやく確認する。
見られて恥ずかしいものは、少なくとも見える場所には置いていない、大丈夫。
晃士は俺の部屋に対して、特にコメントはしない。
男子高校生の部屋なんて、どこも同じようなものなのだろう。
「さむっ」
晴れてはいるが1月なのだから当然寒い。
晃士は昨日とはうって変わって、てきぱきと手を動かす。
「それはハンガーに掛けた方がいいよ」などと、俺に指示を出しさえする。
「お前、何もできないわけじゃないんだな」
「まあね」
「これからどうする? 今日」
「うちは毎年J神社に行ってる」
年越しそばの次は初詣でしょ、と言う。
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