はじめに

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はじめに

みなさんこのようなことを思ったことはないだろうか? 自分の人生やり直せたらいいな、学生時代に戻って今とは違う人生を歩みたいと考えることは少なくないだろう。1人の女性もまた同じようなことを考えていた。 静岡県に住む三島蒼唯(みしまあおい)は某おもちゃメーカーに勤めるどこにでもいる会社員であった。そして今日もまた嘆いていた。 蒼唯の人生どこで間違えたのか。大学時代に寄ったショッピングモールで子供が親に強請(ねだ)っておもちゃを買ってもらって満面の笑みを見ておもちゃを大切にしている姿はとても愛おしく感じていた。 何より1つのおもちゃで子供が笑顔に出来るって素晴らしい、自分が開発したおもちゃが店頭に並び遊びたいと思ってもらえるものを作りたいとおもちゃメーカーで働こうと心に決めて就職を決めた。だが現実は違った。 営業にはとてつもないノルマを課して達成するまで帰ってくるなと常に怒号が飛び交い、上司はかわいい女性社員には卑猥な言葉や仕事しなくていいから一緒にデートしようとセクハラ紛いなことをしている。 その結果、毎日のように労働基準監督署が来るだけでなくて毎日のように内容証明郵便が届いて誰かが訴えられている。もう自分の上司が誰なのか把握すら出来ない。 働くものとして致命的なことがもう1つある。それは自分の働いている会社の名前が分からない。だから社員は某企業と呼んでいる。 周りから聞くと何を言っているのと聞かれるがこれにはある事情がある。モラハラ、パワハラ、セクハラなどを繰り返していることにより、あらゆる会社に買収されて売上が下がりまた買収を繰り返しているため、どこの傘下なのか。 ある日、奇跡的に終電に乗ることが出来た。この終電に乗れて家に帰られるのはいつぶりだろうか。残業代だけでなく交通費も出ず、給料も最低賃金以下で働いている。 最寄り駅で降りて家に向かっていると突然のゲリラ豪雨、これで終わるのか。人生やり直したいなと呟きつつ過労で倒れてしまってそのまま意識を失う。 お姉ちゃんよ、話は聞いた。その願い叶えて信ぜよ。 え、誰?どこかで見たことあるな……。思い出した、まさか歴史上の人物と出会える日が来るなんて思いもしなかった。是非握手してください。 お姉ちゃん、今歴史上の人物のと言ったが誰と間違えているのかい? 誰ってその独特のヒゲでよく言いますね。明治時代に自由民権運動を呈した板垣退助じゃないですか?違うなら一体あなたは誰で蒼唯に何の様ですか? ワシの名前は稲垣進助(いながきしんすけ)、遠い親戚に板垣退助という名のものが居たような気がするな。それで用事と言うのがお姉ちゃんを過去に戻してやり直しさせてあげるためにやってきたのじゃ。 胡散(うさん)臭い勧誘は結構なので。ではさようなら。さっきからお姉ちゃんって言っていますけど三島蒼唯っていう名前なのでナンパなら帰りますよ。 蒼唯殿よ、今は明治何年じゃ?あと、過去に戻れたら出来なかったことを出来る。行きたい場所に行けるぞ。 明治?今は平成であと数日で令和に切り替わる。過去に戻れたらね、板垣退助のニセモノの稲垣進助さんの言うことを聞けばホントに過去に戻れるのですか? ああそうじゃ。とりあえず一旦失礼する。 そう言って蒼唯は目を覚まし、看護師さんから誰と喋っていたのか。家族の方々がとても心配されていましたよ。周りを見渡してもやはり某企業の人たちは誰もいない。見舞いに来ると期待はしていなかっただけにやはりかと言った感じだ。 しはらくすると蒼唯のスマホが鳴り、追加したはずもない稲垣進助からラインで蒼唯が届いた。 「1週間の猶予を与える。じっくり考えるがよいが戻れるのは1度きりのため慎重に。身体はなくなる代わりに魂だけ移る形になる」 過去を振り返ろうとしたが全てを覚えている訳では無い。両親がお見舞いにやって来て毎日のように付けていた絵日記を持ってきてくれてこれまでの人生を振り返ることにしよう。することもないし、どこで自分が間違えたのは見つけるいい機会にしよう。 積まれている絵日記をみて懲りずに書いたものだなと改めて実感をした。
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