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「……それでだな、これも皆で分けて持って帰ってくれ」
「相当な量がありますよ。一人あたり……十つずつくらい」
「持って帰るのが大変なら郵送してやれ」
「分かりました」
社長は面倒事を押し付けられてほっとしているのか、棚の写真を磨き始めた。偽物の甥と遊園地で撮った写真と、本物の甥と姉と横浜中華街で撮った写真が並べて飾られていた。
「三田君、ドラフト始まるよ……年越し蕎麦、買わなくて良かったわ」
経理担当の柴田が蕎麦を見て引きつった顔で笑った。
「ドラフトって?」
「皆んなビール持って帰りたいのよ」
「ははあ」
例年、お歳暮のビールが一番人気で、いつも醜い争いになった。
「だから、今年からドラフトで決める事にしたから」
「……平和的解決ですね」
「そうそう」
「おう。三田。やるぞ」
「木下さん、やる気満々ですね」
「あいつらもな」
若手社員の上原と松井が、念入りにお歳暮の品定めをしていた。ラインナップを見ると、二社の人気ビールと、日本酒、野菜ジュース、ラーメン詰め合わせセット、ハム&ソーセージ、フルーツゼリー等が並べられている。
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