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宮里はそう言って照れ笑いをした。なんて事ない些細な会話だが、毎日の様に会っていればほんの少しだけその人が見える。
「猫好きなんすね」
「あっ、これは……」
もちろん、自分の事も。
レジを終え、外に出ると年賀状を持って来た事を思い出す。
「ギリギリセーフ」
ポストに年賀状を投函すると、年末なんだなと実感して来る。蕎麦を食べたら大掃除も、もうひと頑張りだ。
「戻りました」
「おう、三田。ご苦労様」
ベランダの外から寒そうに白い息を吐いて、木下が部屋に入って来た。
「さぶさぶ」
「窓拭き、やって貰ってすみません」
「いや。それよりな、こいつらをなんとかしてくれ」
「こいつら?」
「専務の子供か?」
「え?」
窓の外で、専務より一回り程小さな猫が三匹鳴いていた。
「……早速これが役に立ちます」
「三田? おい、それ使うやつじゃないのか」
がさごそと袋をあさり、猫の高級おやつを取り出すと猫達の目がぴかりと輝いた。紙皿に入れて差し出すと「ピキーー!」と鳴いて飛びついた。
「社長の金で大盤振る舞いだな」
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