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今日は12月29日。一日がかりで社内の大掃除だ。三田はいらないカタログや雑誌類を紐でまとめていた。窓際で地域猫の「専務」が、年内最後の餌を頬張っていた。
「おい、お歳暮もみんなで分けろよ」
社長が猫のイラストが入ったエプロン姿で、社長室から出て来た。寄付した保護猫の支援団体からのプレゼントらしい。
「分かりました。(人間の)専務は挨拶回りですか?」
「ああ。夕方戻って来るってよ……あとな、ちょっと」
「……はい」
恥ずかしそうに手招きする社長に、すごく嫌な予感がした。
「何です?」
おそるおそる社長室に入ると、大きな段ボールがテーブルの上を占拠してた。
「これなんだが……」
「はあ」
段ボールを覗き込むと、大量の信州そばだった。
「こんなに、どうしたんですか?」
「いやな、皆で昼にでも茹でて食おうと思って長野の知り合いに頼んだんだが……俺も向こうもじじいだろ? 上手く伝わらなかったみたいだな」
肯定すると痛い目にあうのは分かりきっていた。頷くとも無しに曖昧に笑うと、じろりと睨まれた。睨むくらいなら言わなければ良いのにと密かに思う。
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