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「お母さん、玲央菜ちゃんは優しいんだよ」
無邪気に声をかけてくる海斗に、思わず言っていた。
「黙っててよ!」
大人の怒声に怯んだのか、彼は小さく「ごめんなさい」と漏らしたあと、そそくさとダイニングテーブルの方へ行ってしまう。当たり前だろう。なんの前触れもなく、急に怒られたら、わたしが子供でも怯える。
けれど、やってはいけないと思いつつも、やりきれない思いが絶えず湧いてくる。
ソファーに体を預けると、どっと疲れが襲ってきて、そのまま横になる。まだ何もしていないのに。
起きなきゃ、と頭の冷静な部分で思うけれど、もう限界だった。
「疲れた……」
そんな呟きと共に、意識がどこかへ落ちていく。
海斗が「お母さん?」と呼んでいるのが、遠くに聞こえた。
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