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玲央奈を送り、海斗の手を引いて、私と海斗の家に帰る。途中で、海斗が言った。
「思い出したんだ。お母さんが玲央奈ちゃんを見て、言ったこと」
「そうなの?」
「うん。あの時、お母さんね、『この子は天使の顔をしてる』って、そう言ったんだ」
天使の顔。そんなことを言っただろうか。でも、何かの本でそんなことを読んだ気がしないでもない。
明日、年が明けたら、一番に寛人に会いに行こう。寛人にも玲央奈にも、言いたいことがたくさんある。
寛人は、私の意見も玲央奈の意見も、聞いてはいない。ただ、自分の思ったままに事を運ぼうとしているだけ。
けれど、それに従ってはダメだ。私たちは、彼に振り回されていいほどちっぽけな消耗品じゃない。言い訳がましくても、自分の気持ちを大事にしたかった。
さっきまでの自分が嘘のようだ。海斗とも玲央奈とも今年でお別れだから、今年が惜しい、なんて。
今年は終わってしまうかもしれないけれど。
私たちはこれから、新しく作っていくんだ。
横を歩く海斗に、柔らかく目を細める。
私を救い出してくれた君も、誰が何と言おうと、玲央奈に負けない天使だよ――。
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